外反母趾でお困りの方は、なかなか良くならない状態を何とかしようと、手術を考える方が少なくありません。
確かに手術は、痛みやリスクは伴うものの、成功すれば状態を大幅に変えてくれそうな気がします。
しかし手術をする側のお医者さんは、その多くの方が手術を勧めません。
外反母趾治療において、専門家はなぜ手術を勧めないのか。その理由について詳しくお伝えしていきます。
外反母趾とはどんな状態のことか
外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
外反母趾手術とは、どんなことをするのか
外反母趾手術の術式(種類)は200以上もあると言われています。
その中で、近年主流になっているのは、足の骨を曲がっている部分で切断し、その向きを真っ直ぐに付け替える手術。骨切り術と言われます。
足の指を切開し、骨を電気のこぎりで切断。
その切断した骨を真っ直ぐに向きを変え、元の骨とワイヤーで固定。
固まるのを待ち、約三か月程での完治を目指します。
外反母趾手術を進めない理由
骨を切って付けなおすというと、恐ろしいと思う方もおられるとは思いますが、その分劇的に改善はしそうなこの外反母趾手術。
しかし実際は手術をする側のお医者さんですら、積極的には勧めません。
それはデメリットの方が明らかに多いからです。
そんな問題になるデメリットは、大きく二つ。
足が弱るから
外反母趾の手術をすると、様々な要因で足は弱ってしまいます。
まず、足を切開し骨を切断して向きを変えるわけですが、やはり元の状態に比べると、その強度はどうしても落ちることになります。
また手術直後からリハビリ期間までも含め、足を動かさない期間がどうしてもできてしまうので、足全体の筋肉が落ちることになります。
更に痛みや手術後履く特別な靴の影響で、歩き方にも変な癖がつきやすいのも見過ごせません。
これも足に無用な負担をかけることになるので、間接的に足を弱らせることにつながります。
以上のような要因は素人でもすぐに想像のつく弱り方ですが、これら以上に足が弱る大きな要因があるのです。
それは「外反母趾の成り立ち」を見れば、よくわかります
左の絵が正常。真ん中の絵が外反母趾です。
外反母趾は、「親指の先が外に曲がって発生した」と思われがちですが、正確には少し違います。
「親指の付け根が横に広がり、その結果指先が外を向いて発生した」のです。
これは結果的に同じことのように思うかもしれませんが、実は大きく違います。
親指の付け根が横に広がったのがきっかけ・スタートであれば、治すべきなのもやはり親指の付け根の位置のはず。
その結果として、指の向きも真っ直ぐになる。
しかし「親指先が外を向いた」と言う事実にばかり目が行き、多くの場合「親指先を外に広げる治療」をしがちです。
もしそうやって先ほどの右の絵のように、指先を広げて真っ直ぐにしてしまうとどうなるのか。
絵の通り足の横幅は広がったままで、足の骨同士の間に大きく隙間が残ったままなのがわかるでしょう。
実際にそもそも外反母趾の患者さんはこの横が広がり緩んでいることで、足が不安定になっています。
親指先が真っ直ぐなったとしても、親指の付け根あたりは横に広がったままと言う治り方をしてしまうと、その足のぐらぐらや不安定はそのまま改善されないのです。
そして実は外反母趾の手術の治し方も、同じくこの親指先の向きを変えるだけの治し方。
親指の付け根が締まって元に戻る訳ではないこの治し方では、いくら劇的に指の形は真っ直ぐになっても、手術後に強度の弱い、不安定な足が残ってしまうのです。
時間の問題で、元の形に戻っていく可能性が高いから
外反母趾の原因は、「ハイヒール」や「遺伝」や「足を使わない生活で弱った」などが主原因ではありません。
じつは主原因はあなたの間違った足の使い方・歩き方。
専門的には過剰回内(オーバープロネーション)と言う、良くない歩き方が原因だと、足の医療の進んだ国では既に明らかになっているのです。
もしあなたの歩き方が外反母趾を作っているのだとすれば、手術で根本的に治るわけではないというのは、ご理解いただけるはず。
暴食が原因の肥満が、脂肪吸引で根本的に解決するわけではないのと同じ。暴食が続けば、また時期に元の肥満に戻るのは明らか。
外反母趾の手術による改善も、その治り方の良し悪しは別としても、いわば今までの間違った歩き方による「負債」を解消してくれただけです。
歩き方が原因である以上、それを変えない限りまた元の形に戻っていくのは想像に難しくないでしょう。
その事は事前にお伝えするお医者さんが多いですし、例えば聖路加国際病院などでは、ホームページ上でも明記して注意喚起をしています。
また、変形が矯正されても、根本にある外反母趾になっていく傾向がなくなるわけではないため年単位の経過によって症状が再燃することがあります。
聖路加国際病院HPより引用
要するにこれらの事は、実はお医者さんはよくご存知なのです。
なので、基本的に外反母趾の手術は勧めません。
しかしだからといって、お医者さんにも残念ながら足底板の処方ぐらいしか、提供できる選択肢がありません。
なので手術は、痛くて痛くてとにかく何とかしたいと言う患者さんや、どうしても見た目を綺麗に整えたい、と言う患者さんお越しになった場合にのみやむなく、という場合が多いのです。
この様な事は実際に病院に行き、お医者さんに手術を相談された患者さんの方が、よくご存知です。
私は毎日、日常的に外反母趾の患者さんと接している関係上、このような話はそんな患者さん達から聞かせていただくことが多く、把握しているという訳です。
では、頼みの綱・最後の砦だと思っていた手術による改善が期待できないとすれば、いったいどうすればよいのでしょうか。
それは実は、これまでお伝えしたお話の中に、大きなヒントがあったのです。
外反母趾は手術をしなくても、歩き方で改善できる
外反母趾の主原因は、過剰回内(オーバープロネーション)というあなたの良くない足の使い方・歩き方が原因だとお伝えしました。
これは、アメリカなど足の医療の進んだ国では明らかになっている事実です。
歩き方が原因だったということは、改善に必要なのもまた歩き方。
実は外反母趾は、歩き方を修正することで、改善することができるのです。
本当に歩き方で改善するのか?【症例付き】
外反母趾は本当に歩き方で改善するのでしょうか?
私はこれまで歩き方による外反母趾改善に取り組んできており、その詳細な記録を多く残しています。
その中のいくつかの症例を挙げてみます。
これらの記録は、多くの大学病院でも使用している「フットルック」という計測器を使った、信頼性の高いものです。
この方の場合は、左足は中程度後半だった外反母趾が、約4か月後には正常値一歩手前まで改善しています。足の横幅も1センチ以上も小さくなっています。
この方は80歳を超える女性。時間はかかっていますが、それでもやはり中程度後半の外反母趾が、正常値手前まで改善しています。
これらの改善は、基本的に歩き方の改善でもたらされたもの。
足の指には一切触れてはおりません。
そしてこのような例は、公開許可をいただいているものだけで1000例以上もあり、私どもにとっては珍しくないのです。
まとめ
手術による外反母趾の治療は、医師もあまり勧めません。
それは手術後の足が弱ること、再発する可能性がとても高いことが理由です。
ではそれに代わる対策が無いのかというと、外反母趾は歩き方で改善させることができます。
これは外反母趾の原因が、過剰回内(オーバープロネーション)という、良くない歩き方が原因だということからも、不思議ではない話。
実際に改善している方の例も無数にあります。
手術に比べリスクも少なく、取り組みもしやすい。
ぜひ一度試してみるとよいでしょう。