外反母趾になってしまった方が、すぐに取り組む対策の一つがサポーターの使用ではないでしょうか?
外反母趾の方に向けて、多くのメーカーから様々な種類のサポーターが販売されていますが、どれほどの効果があるのでしょうか?
ここでは一般的に売られているサポーターの種類とその狙い、改善効果についてを詳しくお伝えします。
外反母趾とはどんな状態のことか
外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
外反母趾用サポーターとは
外反母趾用のサポーターの特徴は、指を離そうという力が加わるようになっていること。
親指が第二指(人差し指)から離れるように作られているものが基本で、合わせて内反小趾(小指側の外反母趾の様なもの)対策として、小指側も第四指(薬指)から離れるように作っているものもあります。
これに各社それぞれの特徴を出そうと、指の間に詰め物をして離れやすくしたり、足裏にクッションを入れたり、足の横幅(指の付け根辺り)を締める構造にしたりなどの工夫がされています。
靴を履くことのできる薄いタイプや、矯正力を重視したがっちりタイプなど、様々なバリエーションがあります。
価格は1,000円~3,000円程のものが多いようです。
外反母趾用サポーターの目的とその効果
様々なバリエーションのものが展開されていますが、その目的は基本的にすべて同じ。
「足の指を広げたいので、その広げた形に強制的に持って行き、癖をつけたい」というもの。
ではその効果はというと、外反母趾の発生の仕組みから言っても、私のこれまでの治療経験から言っても、効果はほぼ無いといってよいでしょう。
それどころか逆効果で、余計にひどくしてしまっているケースすらあります。
なので専門家のおすすめは、使用しないことがおすすめ、ということになってしまうでしょうか。
これだけ世の中で普通に売られているものに対して、ここまではっきり効果が無いというのも気が引けますが、これは私が現場で直面している事実です。
なぜここまで言い切れるのか。
それはまずそもそも外反母趾とは、「親指先が外に曲がっていった病気」ではないからです。
外反母趾は、親指を広げても治らない
まずはこちらの3枚の絵をご覧ください。
左が正常、真ん中が外反母趾です。
よく見ていただきたいのは、親指の先。
確かに向きは外に向いて、第二指(人差し指)と重なり始めていますが、その位置自体はあまり動いていないのがわかります。
それに対して、親指の付け根辺りをご覧ください、位置が外にずれて、横に広がってしまっているのがわかります。
もうお分かりでしょうか?
外反母趾は、「親指先が外に曲がった病気」ではなく、「親指の付け根が横に広がった病気」なのです。
その結果、親指先の向きは外を向いたということ。
では改善すべきは、
①親指の先の位置
②親指の付け根の位置
どちらでしょうか?
もちろん②の親指の付け根の位置、ですよね。
なのにそこを変えず、①の親指先を広げてしまうとどうなるでしょう。
右の絵の様に横幅は広いまま、骨の間は隙間が空いてゆるゆるになってしまいます。
当然これでは、左の絵の様に元に戻ったとは言えません。
この様な治し方をしてしまうと足に無理があるので、余計に悪化したりまたすぐに戻ってしまうのです。
この理屈はどの外反母趾治療でも同じことが言えるので、テーピングでもマッサージでも同様。
足の指を広げにかかるというやり方は、外反母趾の改善にはプラスに働かないばかりか、マイナスになってしまうのです。
外反母趾の改善は、足の横幅が細く締まってこそ
外反母趾の改善には、足の指を広げるのはむしろ逆効果。
本当に治ったと言えるのは、外に離れて広がった親指の付け根の位置が元に戻って、横幅が締まってこそ。
なので親指先を広げて真っ直ぐにしようとするサポーターは、方向違いの対策ということです。
ではそんなサポーターの中でも、横幅を締める機能付きのものはどうなのでしょうか?
中には親指先を広げると同時に、付け根辺りを締める機能付きのサポーターも販売されています。
ではそれは効果があるのかというと、残念ながらそうではありません。
それは、外反母趾発生の仕組みをご理解いただければ、よくわかっていただけます。
どうやって外反母趾になってしまうのか
まず外反母趾の発生のメカニズムを、できるだけ簡単に説明してみます。
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形では土踏まずがあって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
これを専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まずが落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
なぜサポーターで締めても治らないのか?
これを踏まええると、横幅を締める機能付きのサポーターでも、なぜ良くないのかが見えてきます。
外反母趾、言い換えれば親指の付け根の横への広がりは、このぐらぐら足オンリーで歩く癖、というので発生したはず。
その癖を改善もせず、広がった箇所をただ単に横に圧迫して占めるというやり方は、あまりにも短絡的。
もちろん原因はそのままなので、横幅が締まって改善していくわけはありません。
そしてそもそも足は、歩くときに変形を繰り返す必要があるのに、固定をしてしまうと正しく歩くことができません。
今回はサポーターの話でしたが、このことも外反母趾治療全般に言えること。
このように何重にも誤解し間違えた対策が、未だに一般的に取り組まれているので、外反母趾は難治とされているのです。
横幅が締まった、外反母趾の改善例(症例写真)
しかし親指を広げずに足の横幅が締まる。そんな治り方が、本当にできるのでしょうか?
こちらをご覧ください。
左足の横幅4ミリ減、右足の横幅は9ミリ減
この方は両足とも横幅8ミリ減
左足の横幅11ミリ減、右足の横幅は6ミリ減
横幅が1センチ近くも減るというのは、かなりのことです。いつもの靴がゆるゆるになります。そしてもちろん皆さん痛みや角度も改善しておられます。
いかがでしょうか?
これでこそ改善したと言えますし、横幅が締まって元に戻るからこそ、靴に当たらなくなり靴選びが楽になるのではないでしょうか?
では私たちはテーピングもサポーターもマッサージも施さず、どうやってこれらの改善を実現したのか。
それは先ほど述べた「しっかり足⇔ぐらぐら足」の動きを取り戻す、歩き方の指導をしただけなのです。
私どものところでは、このような改善例が公開の許可を得ているだけでも、1000例以上あります。決して珍しいことではありません。
形だけを整えることに終始せず、原因を的確にとらえてそれを改善するからこその成果です。
まとめ
外反母趾の改善に、サポーターは効果的ではありません。
それどころか逆効果になる場合も。
それはサポーターが外反母趾の発生の仕組みから考えて、適切な対策ではないから。
原因への対策をせず、形だけを整えにかかるようなやり方では、改善しないということです。
外反母趾の発生のメカニズムは、本来持っている足の使い方・歩き方のシステムを崩してしまっていることにあります。
なので歩き方を無理のない適切なものに改善することで、外反母趾は本当の意味で改善するのです。