外反母趾の疑いがある方や、ご家族に外反母趾の方がおられる方は、「どうすれば外反母趾を予防できるのだろう」と考えておられるのではないでしょうか?
「なってから治す」よりも「ならない」方がもちろんいいですし、今兆しが見えている方は、少なくともそれ以上悪くなるのは防ぎたいでしょう。
結論から言うと、外反母趾は予防が可能です。
しかし多くの方が思っておられるような「足指のトレーニング」等では予防できないどころか、実は逆効果になるのです。
ここではどうすれば外反母趾を予防できるのか、逆効果になる予防法とその理由などについてを、詳しくお伝えしていきます。
外反母趾とはどんな状態のことか
まず外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
一般的に広まっている外反母趾の予防法
現在、世間一般で広まっている外反母趾の予防法は、細かく言えばたくさんありますが、大きく分けると2種類。
足に負担の少ない靴を履きましょうというものと、足の指をもっと使いましょう・鍛えましょうというもの。
それぞれについて詳しく見ていきます。
靴に気を付ける
これは、足に負担のかかる靴が影響して外反母趾になっている、という考え方からの予防法です。
この場合で言われる「足に負担のかかる靴」とは、代表的なのはハイヒールなどの踵の高い靴。
そして先が細くなっていて、足を圧迫する靴。
これらのような靴をできるだけ避けることで、足への負担が少なくなるようにしようというものです。
足指を鍛える
これは、足の指を使わず弱っていった結果、外反母趾になるという考え方からの予防法です。
「足指じゃんけん」や「足指タオルつかみ」などのトレーニングやストレッチ等で、衰えないようにしようという狙いです。
これらの効果は?
まず靴については、狙いとしては悪くはありません。
欲を言えば踵の高さや先の細さ以外の問題点も、考慮に入れるべきでしょう。
それに引き換え問題なのは、足指のトレーニングで予防しようという考え。
これは効果があるどころか、逆効果になることが殆どです。
なぜなら外反母趾は「足指を使っておらず、弱って発生する」という考え方が、そもそも間違っているから。
むしろ外反母趾は「足指を使いすぎることで、疲弊して発生する」という方が正解。
だとすれば当然、その対策である「鍛えましょう」は、逆効果ということになります。
外反母趾になる原因が未だ知られていない、というのがこのような問題を引き起こしているのですが、実はそれはすでに明らかになっていることなのです。
足の仕組みと外反母趾の原因
外反母趾の発生の仕組みをご理解いただけば、何を予め防げばよいのか(予防)も明確になります。
それをご理解いただくために、歩くときの足の骨格の動きから順にお伝えします。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形は土踏まず(アーチ)があって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
この状態を専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まず(アーチ)が低く落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に骨同士の結合が緩んだ「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
これにプラスして、親指の付け根で地面を過剰に蹴る動き(専門的にはアブダクトリーツイストと言います)をすることで、外反母趾は発生しているのです。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
足指を鍛えると、逆効果になる理由
外反母趾はぐらぐら足オンリーで歩くことが、発生の始まりだと言いました。
もしあなたの足がぐらぐらで不安定なら、力を入れて安定させようとするのではないですか?
その時に力を入れる箇所は、そう、足の親指~その付け根辺りになるのです。
これが常時続くと、足の指は重さを支えきれなくなり、外反母趾になる。
なので私は先ほど、外反母趾は足の指を使わず弱ってなっているのではなく、むしろ使い過ぎで疲弊してなっていると表現したのです。
歩くときに必要のない「クセ」がつく
これを知らず、外反母趾の予防や改善のために足の指を鍛えるとどうなるか。
鍛えないより鍛える方が、いくらかはましなのでは?と思う方がおられるかもしれませんが、そうではありません。
歩くときには本来、足の指を握ったり力を入れたりという場面はありません。
なのに鍛えるという動きが動作の癖になってしまい、歩くときに過剰に足指に力を入れる動きをしてしまうようになるのです。
そして歩くときに足の指を使おうとすればするほど、足はぐらぐら足(回内/プロネーション)に近づいていってしまうのです。
その結果、それが元で逆に外反母趾が悪化する、ということも良くあるのです。
正しく歩くことが、最も効果的な予防
ということは、どうすれば外反母趾を予防できるのでしょうか。
それは端的に言えば、正しく歩くこと。歩き方を崩してしまわないよう、良い歩き方をキープすること、につきます。
その効果は絶大です。
なぜならそれが外反母趾発生の原因そのものなので、予防であるだけでなく、改善にまでつながります。
それは暴食が肥満の原因ならば、食事量のコントロールが肥満予防にもなり、肥満改善にもなるのと、ちょうど同じことです。
私のお伝えしていることは、理論上そうなだけではなく、実際に多くの患者さんを通じて改善し実証してきたものでもあります。
そのような改善例を、いくつか紹介します。
この方の場合は、左足は中程度後半だった外反母趾が、約4か月後には正常値一歩手前まで改善しています。足の横幅も1センチ以上も小さくなっています。
この方は80歳を超える女性。時間はかかっていますが、それでもやはり中程度後半の外反母趾が、正常値手前まで改善しています。
これらの改善は、基本的に歩き方の改善でもたらされたもの。
足の指には一切触れてはおりません。
そしてこのような例は、公開許可をいただいているものだけで1000例以上もあり、私どもにとっては珍しくないのです。
注意点
歩き方で外反母趾が改善するなら、その歩き方は同時に予防にもなることは、想像に難しくないでしょう。
しかしもちろん、それはどんな歩き方でもいいわけではありません。
あちらこちらで歩き方の指導をしていますが、残念ながらその90%以上は逆に悪化させる可能性のあるものばかり。
このサイトでも歩き方は動画お教えしていますし、信頼のおける歩行指導のインストラクターもご案内しています。
しかしもしあなたがそれ以外で、外反母趾を歩き方で予防しよう、治そうと指導してもらう場合「この歩き方だけでも、外反母趾の角度と、足の横幅は改善しますか?」と尋ねましょう。
私達なら「大丈夫ですよ」とお答えすることができます。
まとめ
外反母趾の予防は、その発生原因から考えた適切なものであるべき。
その面から考えて、足指を鍛えるというのはむしろ逆効果。
歩き方を正すことこそが、外反母趾の予防はおろか改善にまでつながる、信頼のおける方法。
しかし歩き方と言っても、様々な理論の様々ものがあるので、注意が必要。
本当に効果のあるものなら、足指を触らずともそれだけで外反母趾が改善していくほどの効果があるのです。