外反母趾にお悩みの方は、その痛みや形を何とかするために、何らかのグッズを買ったことのある方が多いのではないでしょうか?
しかしそれらのグッズにも効果のあるものや無いもの、そして実は逆効果になるものまであるのです。
このページでは有効なグッズの見分け方や、そのための外反母趾の発生のメカニズムについて、専門家の立場で解説していきます。
外反母趾を改善するグッズの種類
まず、一般的に皆さんが手に入れることができる外反母趾改善グッズを、種類別に紹介してみます。
サポーター・装具
外反母趾改善のグッズの中で、一番目にするものがこれでしょう。
様々なタイプのものがありますが、共通して言えるのは「足指を広げた状態」を作り出そうとしているということ。
マジックテープなどできっちり固定しようとするものから、繊維の力で穏やかに広げようとするものまで、いろいろな形や強度のものがあります。
また、親指の付け根辺りの横にクッション材などが入っているものもあり、外反母趾の出っ張り部分が靴との摩擦等で、痛くなるのを防ぐ設計などのものもあります。
靴下
これもサポーターや装具に近い考え方で5本指や3本指等、指が広がるようにしようとしてくれるコンセプトのものが多いです。
靴下の場合それにプラスして、アーチを作るように促す設計のものなどがあります。
トレーニンググッズ
これは大きく分けると、足指を握るようにして鍛えるものと、足指の間を広げるように引っ張るものが多いようです。
インソール
いわゆる靴の「中敷き」です。
メーカーによりそれぞれコンセプトが全く違うので、選び方に注意が必要です。
市場に出回っているものの中で主流は大きく2つ。
クッションを良くしてくれるものと、アーチを作ろうとする働きのものが多いようです。
どのグッズが効果があるのか?
皆さんにはショッキングなお話かもしれませんが、これまでに上げたようなグッズはごく一部の例外を除き、ほぼすべて改善効果はありません。
というかむしろ逆効果で、外反母趾を治りがたくしているものが、大半を占めています。
これは適当な話ではなく、私は現場で外反母趾の方を多く改善してきた経験をもとに、お伝えしています。
ではなぜ効果がないと言い切れるのか。
それは外反母趾の発生の仕組みを知れば、必ずご納得いただけます。
それどころかこれまで外反母趾が何故治らなかったのか、どうすれば治るのかもご理解いただけるはずです。
外反母趾の原因に対する誤解
外反母趾の原因に対しては、日本ではいまだに多くの誤解があり、正しい情報が広まっていない状態です。
ハイヒールのせい、ではない
外反母趾の原因は「ハイヒールをよく履いたから」「母親の遺伝」「足指を使わず弱ったため」と思っておられる方が多いようです。
しかしこれらはすべて、正しくないのです。
ハイヒールは確かにその形が外反母趾を連想させますが、履いていないのになった、という方は大勢おられます。
男性の患者さんもおられますし、靴を履く習慣のない方々にも見られます。
遺伝が主原因ではない
ご家族からの遺伝の影響は確かに関係はありますが、だけで決まってしまうわけではありません。
それを裏付けるように、あなたの外反母趾はずっとそのままの形ではなく、徐々に悪化しておられるはずです。
足指が弱ったせい、でもない
足指の退化というのも、説明がつきません。
裸足の民族の方の話でもそうですが、足指を強く使う必要のあるプロスポーツ選手などにも良く見られるからです(例えばフィギアスケート選手で有名な八木沼純子さんは、外反母趾の治療経過をブログで挙げておられます)
この時点で、足指を鍛えるグッズやトレーニングは、適切な対策ではないことがわかってしまいますね
では、いったい何が本当の原因なのでしょうか?
実はそれはすでに、明らかになっていることなのです。
すでに明らかになっている、外反母趾の本当の原因
実は外反母趾発生の仕組みは、足の医療が進んでいる国々では、すでに明らかになっていることなのです。
それではここでその外反母趾の発生の仕組みを、できるだけ簡単に説明してみます。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんの考える一般的な足の状態。
この形では土踏まずがあって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
この状態をを専門的には「回外(スピネーション)」というのですが、ここではわかりやすく「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まずがつぶれて低くなり、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
この状態も正式には「回内(プロネーション)」といいますが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
歩くときに、足の骨はどんな形に動いているのか
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときにずっと「しっかり足」だと、歩くときの衝撃が直通で膝や股関節に行き、早くダメになってしまいます。
ですから着地の瞬間には歩行時の衝撃を吸収するため、普通に歩けば自然に足は「ぐらぐら足」の形に変形しているのです。
そして着地が終わったらすぐに、「しっかり足」の形に戻る。
実は歩行時の足はずっと同じ形ではなく、このようにに2つの形を行ったり来たりしているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、どうやって外反母趾は発生しているか、についてです。
もともとは「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足だけ」で歩く習慣になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足は体の重みや衝撃に負け、横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、私のオリジナルの特別な説ではありません。
アメリカをはじめとした「足の医療の発達した国」では、ごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
良くないグッズの見分け方
いかがでしょうか。
これが現在明らかになっている外反母趾の発生の仕組みです。
これがわかれば外反母趾を治すために、何が良くて何が効果が無くて、何が逆効果なのか、も見えてきます。
指を広げるのはダメ
外反母趾は足の骨が緩んで、伸びて広がってしまった状態。
なので治る時には締まっていくことが必要になります。
ということは骨同士を広げるのは、逆効果。
それは足の指の骨も例外ではありません。
にもかかわらず、そのような対策グッズが出回っている理由の一つは、外反母趾を「足の指が内を向いてしまった病気」だと思ってしまっていること、があげられます。
外反母趾とは、足の親指が内を向いたためになる病気ではありません。
真ん中の絵が外反母趾ですが、この絵で示すように「親指の付け根が横に広がった結果、親指が内を向いた病気」なのです。
これは似ているようで、全く違うことなのです。
という訳で指を広げるものや、指の間に何かを挟むようなグッズを使って治せば、右の絵の様に足の横幅が広がってしまいます。
これでは関節が広がり緩んでしまい、足はぐらぐらになります。
では指だけ広げてそのほかの箇所を締めるようなサポーターは、と思う方もおられるでしょう。
指を広げてその他(親指の付け根や土踏まず辺り)を締めるというのは、足の骨格の仕組み上矛盾があり、無理があるのです。
またそれらがなぜダメなのかは、次の「固定はダメ」をお読みいただくと、ご理解いただけるでしょう。
固定はダメ
歩くときに足は「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返すのが本来だとお伝えしました。
それにより衝撃を吸収しています。
サポーターや装具、またはテーピングなどは「しっかり足」の状態で固めてしまおうという狙いでしょう。
しかし「ぐらぐら足」が悪者なのではなく、それオンリーで歩くのがダメなだけ。
「ぐらぐら足」も衝撃吸収用に必ず必要な存在です。
もし「しっかり足」で固めてしまうと、衝撃は吸収できません。
また外反母趾になったのは「ぐらぐら足オンリー」で歩くという「歩き方の癖」のせいのはず。
「しっかり足」に固めてもし治ったとしても(それ自体もあり得ないですが)、歩き方の癖がそのままなら、元に戻っていくのは時間の問題です。
という訳で、足の指であろうがアーチであろうが、固定をするようなグッズはどのような形であろうと、本質的には治らないということです。
変形した「形」だけを戻そうというのは、ダメ対策
外反母趾の変形したその形は、理由や原因といったものがあってなったはず。
その原因を取り除くから、形も治るというのが、自然な考えではないでしょうか。
そしてその原因が毎日の歩き方にあったとしたら、それを変えずして外反母趾が治ることはありません。
にもかかわらず、なぜこのような効果がないばかりか逆効果のグッズが、多く出回っているのでしょうか。
それは
①日本の足の医療や情報が遅れている
②外反母趾の原因をわかっていない方が、作っている
③手っ取り早く何とかしたい、と考えている方が多い
④原因を考えず、「形を治すことだけ」に囚われてしまっている方が多い
等が原因ではないでしょうか。
例外的に効果のあるグッズ
例外的に効果のあるグッズも、わずかに存在します。
そのポイントになるキーワードは「過剰回内(オーバープロネーション)対策」と、「動きを促す(可変)」です。
外反母趾の原因が過剰回内である以上、その対策グッズであれば効果がある可能性はあります。
しかしそれが正しく施されているかどうかの見分けは、難しくはあります。
それが固定する様なものではなく「しっかり足⇔ぐらぐら足」の動きを促すような仕組みであれば、良いものである可能性は高いでしょう。
インソールや靴下などで、そのような対策を施しているものが、わずかではありますが出回っています。
私の知る限りで確実なものとしては挙げられるのは、インパクトトレーディング社のインソールシリーズ「スーパーフィート」。
これは足の医療の進んでいる医療用のインソールを一般向けにしたもので、正しい動きを促す過剰回内対策が、しっかり施されています。
グッズを使わずとも、外反母趾は治すことができる!
しかしどちらにしても、これらグッズは補助的なもの。
本質的には足の使い方、歩き方の改善こそが必要です。
本当に歩き方で治るのか?(改善症例写真)
本当に過剰回内を改善する歩き方をすれば、外反母趾は治るのでしょうか?
それは間違いありません。
それは理論的にだけではなく、私のこれまでの実績的にも言い切ることができます。
本当に?と思われる方のために、いくつか改善例を挙げてみます。
これらは多くの大学病院でも使用しているフットルックという、信頼性の高い計測器のデータです。
この方は特に左足は重度(40度以上)間近の外反母趾だったのが、正常値(14度以下)一歩手前まで大幅に改善。
横幅が1センチ以上締まっているのがご覧いただけるでしょう。
外反母趾が治る時は、このように指が広がるのではなく横幅が締まった結果、出っ張りが改善するのです。
この方の場合ご高齢で、時間はかかっているものの大幅に改善。中程度後半だった外反母趾が、同じく正常値一歩手前までになっています。
治療に際して、全身の骨格の矯正は行いましたが、足指には一切触れていません(2人目の例の方は、骨格の矯正も行っていません)
このような改善例は私たちにとっては珍しくなく、公開許可のあるものだけで1000例以上所有しているのです。
これだけ大幅な改善が、歩き方の治すだけで得られるのは、それが外反母趾の根本原因だからなのです。
外反母趾を改善する歩き方(動画)
具体的にはどんな歩き方をすれば良いのでしょうか?
まずはその場で行進をするように、足踏みをしてみてください。
そしてその動きのまま、ゆっくり前に出てみてください。
いつもよりももを持ち上げるような、この歩き方でOKです。
「本当にこれだけで?」
「一般的に良いと言われている歩き方と、全然違うけど?」
よく言われますが、大丈夫です(笑)
私は治療の現場でもこれで成果を出していますし、足の骨格の仕組みから見てもこれで正解です。
正確には、これで過剰回内が完全に解消されたわけではありません。
しかしこの歩き方で、その基礎までができていることになります。
やってみると痛みのある方であれば、まずそもそも痛みが軽減していることに気づくはず。
続けていくことで、足の形までがどんどん変わっていくのです。
まとめ
外反母趾は、あなたの良くない歩き方で発生する生活習慣病。
グッズはその場しのぎになればましな方で、逆効果のものがとても多いのです。
なので外反母趾は治らない、とされています。
しかし治らないものではありません。
問題の歩き方を改善できれば、外反母趾は改善できるのです。
しかし注意点は、歩き方にもいろいろあるということ。
残念ながら、一般的に良いとされている歩き方の多くが問題アリ。
私たちのお教えする歩き方が、このような結果につながっているのは、アメリカ足病医学をもとに考えられた、足にとって自然な歩き方だからなのです。
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