外反母趾の原因として足裏アーチの低下、いわゆる「偏平足」を挙げる方がおられます。
このページでは外反母趾と偏平足の関係や、その治り方について説明します。
外反母趾とはどんな状態のことか
外反母趾とは、親指の付け根辺りが横に広がり、出っ張ってしまった状態。
痛みは出ない方もおられます(痛みは無くても、その影響はあちこちに出ているので要注意です)
あなたが外反母趾かどうか、またその程度については以下の様なチェックでわかります。
外反母趾の基準とセルフチェック
偏平足とはどんな状態のことか
人間の足は、真っ平で全面ピッタリ地面に着いているわけではなく、足裏の内側辺りにアーチがあり、通常の状態では地面には着かないようになっています。
このアーチが無く、内側もべたっと地面に着いてしまっている状態を「偏って平らな足」ということで「偏平足(へんぺいそく)」といいます。
偏平足に「どの程度アーチが下がればアウト」というような、明確な基準はありません。
ということもあり、ご自分が偏平足なのかどうかは判断は難しいところです。
なのでご自分が偏平足(ぎみ)だということに、気づいておられない方も多いようです。
私どもの場合、多くの大学病院でも使用の足圧測定器「フットルック」によって確認します。
通常はこのように出ますが、偏平足の方はこのような形で出ます。
左が土踏まずのある方、右が偏平足(ぎみ)の方。
よくある誤解でいうと、内側が少しでも浮いていればOK、と思っておられる方が多いです。
しかしこの足圧測定データの様に、足の内側半分は浮いているぐらいで、やっとまともにアーチがある状態、となります。
外反母趾と偏平足の関係とは
偏平足(アーチの低い足)は、外反母趾の発生の仕組みに深くかかわっています。
なのでこれを理解することが、外反母趾を早く治すことにつながります。
という訳で、まずは外反母趾の発生のメカニズムを、できるだけ簡単に説明してみます。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形では土踏まず(アーチ)があって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
この状態を専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まず(アーチ)が低く落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
ぐらぐら足=偏平足!
ここまでの説明をお読みになって、気づいた方もおられるでしょう。
そうです、話に出てきたアーチの低い「ぐらぐら足」こそが、一般的に言う「偏平足」ということです。
少し先ほどの話を踏まえながら整理をすると、土踏まずは高さがあることにも意味があるのですが、それ以上に「歩くときなど必要に応じて、潰れて低くなること」が重要なのです。
そのために高さが必要であり、その仕組みが足のクッション機能になっているということ。
ということは、ぐらぐら足オンリー(常に最初から潰れた状態)で歩いている偏平足の方は、そうでない方に比べ衝撃が足裏で吸収できず、他の関節が壊れていきやすいということ。
要注意なのです。
そしてそのぐらぐら足オンリーで歩く癖が、外反母趾の主原因になっているという点で、偏平足と外反母趾は大いに関係があると言えます。
但し、偏平足=外反母趾という訳ではありません。
ぐらぐら足オンリーの歩き方は、確かに外反母趾の主原因ですが、それだけで発生しているのではないからです。
外反母趾はそれにプラスして、前足部(特に母指球付近)で強く蹴る動きをすることで、発生します。
(この蹴る動きのことを、専門的には「アブダクトリーツイスト」と言います。)
まとめ
外反母趾とアーチの低い足「偏平足」は、大いに関係はあります。
偏平足は生まれつきでどうにもならない、と思っておられる方が多いようです。
しかし確かに、偏平足は生まれつきの素養も大いに関係していますが、むしろ後天的な足の使い方で「偏平足にして使ってしまっている人」の方が多いのです。
その偏平足にしてしまう足の使い方が、外反母趾発生の仕組みの一部になっているということ。
ということは逆に言えば、偏平足は治せる場合が多い、と言えます。
外反母趾を治す流れの中で、偏平足も改善していく場合が非常に多く、その結果足の衝撃吸収力が高まり、膝や腰の痛みも改善されるケースはよく見られるのです。