外反母趾に悩んでいる方は、様々な治療の方法を試してきておられる方が多いようです。
しかしそれらの治療の方法の中には、私たち専門家の目から見れば根拠に乏しいものや、逆効果になってしまうものも多いのです。
ここではそんな数々の外反母趾の治療の方法と、それぞれの効果についてお伝えしていきます。
現在考えられる外反母趾の治療の方法
外反母趾の治療の方法は、保存療法やセルフケアから手術や手術まで、様々なものがあります。
ネット上でもたくさんの紹介ページがありますが、まずはそれらを整理してみます。
手術
変形した形を外科手術によって、元に近い形に戻してしまおうという治療の方法
様々なタイプの手術の方法がありますし、それは状態などに応じて選択されます。
なのでここでは2019年現在、一般的によく使われているものをご説明します。
それは曲がってしまった親指の骨を一度切断し、その向きを変えるというもの(骨切り術)
向きを変えた後は金具でそれを固定し、骨が引っ付いて固まるまで待つことになります。
固まった後は金具を抜きますが、ここまでにおよそ2か月程かかります。
その間はつま先に体重がかからず、踵で歩く形になる専用靴で過ごします。
電気治療・超音波治療
これらは、硬直してしまった足の筋肉などの組織を緩める治療の方法。
固まってしまったままだと戻りようがないので、これらの手段でまずは緩めよう、ということです。
やり方は違いますが、どれも振動を与えることで緩めるというやり方です。
その他何らかの機械を使う場合は、およそこれが狙いの場合が多いです。
マッサージ
これは基本的には電気治療や超音波治療と同じ狙いで、固まってしまった患部を緩める治療の方法。
治療院がやる場合、それに伴って動きにくくなった関節を動きやすくしたり、内に入り込んだ親指を元に戻す手技を加えたり、かかと周りの骨の動きや位置を修正したり等のアレンジがあるようです。
足指ストレッチ
これもマッサージ同様、固まってしまった組織を柔らかくしようとする治療の方法。
親指を壁に押し付けて伸ばすものや、親指をつかんでぐるぐる回す等、様々なやり方がありあます。
足指トレーニング
足の指を使わない生活により、足の指が退化している。
外反母趾はそのせいで発生しているので、足指を鍛えて治そうという考え方の治療の方法。
足指でじゃんけんするように動かす運動や、タオルをつかむ運動(タオルギャザー)、両親指にゴムをひっかけ、それを両サイドに引っ張る運動(ボーマン体操)、つま先立ちを繰り返す運動などがあります。
テーピング
テーピングを使い、固定して修復を待とうという治療の方法。
足の形を元の形にテーピングで固定します。治療院でも行っているところもありますし、ネット上でも多くの動画が上がっているので、ご自身でも取り組むことができます。
足指サポーター・装具
これはテーピングと同じ考え方で、固定して修復を待つ治療の方法。
ネット上や薬局などでも様々な種類が売っていますし、病院でも処方されるものもあります。
材質や形状、固定力などで多少違いはありますが、その形で固めたいという基本的な狙いは同じです。
インソール・フットベッド・オーソティクス・足底板
足の形や動きが良くないせいで外反母趾は発生している。
なので靴の中敷きで歩き方を修正しコントロールすることで、改善しようという治療の方法。
名前は呼び方の違いだけ、と考えてよいでしょう。
クッション性の高いもの、アーチをサポートするものなど、商品によってその狙いは大きく違います。
当然効果も大きく違うので注意が必要です。
歩き方の改善
歩き方が良くないせいで外反母趾は発生しているので、その歩き方を治しましょうという治療の方法。
歩き方が問題で、歩き方を変えるべきだという考え方は同じでも、それぞれの信じる理論によって提唱する歩き方は全く違うので、注意が必要です。
どれが有効かは、発生の仕組みを知ればわかる
ではこれらの治療の方法の中で、有効なものはどれでしょうか?
それは外反母趾の発生の仕組みを知ることで、おのずと明らかになります。
まずは外反母趾の発生の仕組みを、簡単に説明してみます。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形ではないのです。
大きく分けると、2つの形を交互に繰り返し変形しながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の一般的な足のイメージ。
この形では土踏まずがあって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
これを専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まずは潰れて低くなり、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
通常、体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままだと、歩行時の衝撃が直通で膝や股関節に行ってしまい、痛んでしまうのです。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、足は通常、あなたがそうしなくても自然に「ぐらぐら足」の形に変形しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻っていく。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」と交互に変形しながら歩いていたものが、何らかの理由で「ぐらぐら足だけで歩く癖」になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収のために使う緩んだ状態の足なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が発見した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく一般的な知識。
足病医学の基礎中の基礎なのです。
発生の仕組みから考える、有効な治療の方法は
外反母趾は遺伝だけでなっているのではありません。
それは殆どの方の外反母趾が、生まれついてその形だったわけではないことからも、明らかです。
またハイヒールのせいというわけでもありません。
ハイヒールを履かない方や男性はおろか、裸足の民族の方にも見られるからです。
すでにお伝えしたように、外反母趾は足の使い方(歩き方)が原因。
先ほどの外反母趾の発生の仕組みを頭に入れたうえで、一つ一つ検証してみましょう。
固定は×
まず、足は「しっかり足⇔ぐらぐら足」を繰り返して歩いているということは、固定をしてしまうとよくないことがわかります。
「固定をして修復を待って、治ったら固定しないようにしたら?」という方もおられるでしょう。
しかしぐらぐら足のみで歩いてしまうという癖を治してもいないのに、固定を外したらどうなるでしょうか。
発生した原因はそのままですから、すぐに元に戻るのは目に見えています。
なので実は手術も同じです。ぐらぐら足のみで歩いてしまう癖を何とかしなければ、長い目を見れば元の形に戻っていってしまうのです。
このことは、実はお医者さんはよくご存じです。なので良心的なお医者さんはきちんと教えてくれますし、聖路加国際病院のホームページなどでは、以下の様に表記しています。
また、変形が矯正されても、根本にある外反母趾になっていく傾向がなくなるわけではないため年単位の経過によって症状が再燃することがあります。
聖路加国際病院HPより引用
要するに形だけを何とかしよう、という考え方では、本当の意味では治らないのです。
足の骨の調整は、必要ない
先ほどの形だけを何とかしても仕方がない、という考え方の延長線上で、足の骨の調整も必要ありません。
毎日の生活の動きの癖でその形にしているのであれば、それを改善できなければ繰り返すだけです。
それは足の指の骨であろうが、踵の骨であろうが、足首の中の骨であろうが同じこと。
足の使い方(歩き方)の問題なのに、誰かに調整してもらうことで本質的に解決するということはありえません。
ほぐす必要なし。逆効果の場合も
固まってしまった筋肉などの組織は、歩き方の問題によりそうなったもの。
ということは歩き方を正せば、その硬直はなくなっていきます。
これは私のこれまでの経験からも断言できます。
逆に固くなった原因がそのままであれば、その時何らかの力で柔らかくできても、すぐに同じ状態に戻ります。
これはスマホを持つ姿勢で肩こりになってしまった方が、肩をもみほぐしてもらっても解決にはならないのと同じ。
その時気持ち良いだけで、そのスマホの持ち方をする限り同じことになるだけ。
その姿勢を止めることができて、初めて解決する問題です。
それでもやっぱり、ほぐして緩めたほうがより速く治るのでは、という方もおられるでしょう。
しかし、その固さは必要に迫られてそうなった、という見方もできます。
その辺りを酷使するあまり、保護として固くした、ということ。
それまでクセづいた良くない歩き方も、急激には変えることは難しい中で、ほぐして緩めてしまうと、ある意味での保護が無くなることに。
そうすれば逆に、中々痛みなどが取れないこともあるのです。
なので基本的には発生原因を修正するのが先。
ほぐさずとも結果としてほぐれてくる、のを待ちましょう。
足指は退化していない。むしろ酷使しすぎ
先ほどの説明だけではわかりにくいかもしれませんが、外反母趾は足指を使わないことで退化して発生しているのではありません。
むしろぐらぐら足で歩き不安定なのを、指で踏ん張りすぎることにより発生しています。
使っていないのではなく、使い過ぎ。
もし使っていないせいであれば、足指を酷使するハイヒールなどは、良いトレーニングになって治っていくはず。でもそうではないですよね。
またフィギアスケート選手で有名だった八木沼純子さんは、ご自身が外反母趾で、その改善経過をブログに挙げておられます。
足指を使わずフィギアスケート、できるはずもありません。
なので足指トレーニングは逆効果。それどころかむしろ歩き方に変な癖までつくので、すぐにやめるべきです。
インソールは、種類次第
インソールは、外反母趾は歩き方や足の使い方が問題だとしている点では、良い狙いです。
しかし足は変形を繰り返していて、それがうまくできなくなっているのが外反母趾の原因。
そうである以上、例えばクッション性の良い中敷きなどは、意味がありません。
クッション性が向上すれば、問題の歩き方が良くなるわけではないのですから。
むしろ柔らかすぎると歩きにくくなるので、逆効果の場合も。
(砂浜を歩くのは気持ちいいけど、歩きにくいのと同じことです)
土踏まずも本来、歩いている間に上がったり下がったりしなくてはいけないのは、先ほどお伝えした通り。
なので土踏まずを持ち上げる、アーチサポート目的のインソールも良くないのです。
もしインソールを利用するなら、「しっかり足(回内)⇔ぐらぐら足(回外)」という足の仕組みを考慮したものを選びたいところです。
インソールに関しての注意としては、病院で出されるものがそれを考慮しているかというと、逆にそうではないものが多いということ。注意が必要です。
そして足裏からインソールで、脚の動き全体を修正するのには、限界があるということ。
やはり歩き方自体の修正がメインとなります。
【結論】一番効果的なのは治療の方法は
最後になりましたが、歩き方の改善こそが外反母趾の発生の仕組みから考えて、一番効果的です。
他の治療に比べて地味な気もしますし即効性の点でも、大丈夫かという気もしますよね。
しかし私の経験上、正しく歩ければ痛みはその日から無くなります。
これは全く大げさな話ではありません。
しかも出っ張りはもちろん、足の横幅まで小さくなっていきます。
人間には本来自然治癒力があり、負担をかけることをしているから治っていかないだけ。
負担の原因を取ってやると、驚くほど改善していきます。
本当に改善するのか(症例写真)
本当かな?と思われる方もおられるかと思い、いくつかの実例を挙げておきます。
これらは大学病院でも使用しているフットルックという、信頼性の高い計測器のデータです。
特に左足は中程度後半の外反母趾が、正常値一歩手前まで大幅に改善。
横幅も1センチ以上小さくなっています。
この方の場合ご高齢で、時間はかかっているものの大幅に改善。
お二人とも治療に際して、足指には一切触れていません。
そしてこのような改善例は私たちにとっては珍しくなく、公開許可のあるものだけで1000例以上所有しているのです。
これだけ大幅な改善が、歩き方の治すだけで得られるのは、それが外反母趾の根本原因だから。
しかし注意点は、歩き方にもいろいろあるということ。
インソールなどと同じで、様々な狙いの様々な歩き方があります。
外反母趾を改善する歩き方
具体的にはどんな歩き方をすれば良いのでしょうか?
まずはその場で行進をするように、足踏みをしてみてください。
そしてその動きのまま、ゆっくり前に出てみてください。
いつもよりももを持ち上げるような、この歩き方でOKです。
「本当にこれだけで?」
「一般的に良いと言われている歩き方と、全然違うけど?」
よく言われますが、大丈夫です(笑)
私は治療の現場でもこれで成果を出していますし、足の骨格の仕組みから見てもこれで正解です。
試してみれば、足指への負担が大きく減っていることに、すぐに気付いていただけるでしょう。
まとめ
様々な外反母趾対策の手法やグッズがありますが、取り入れる前に考えるべきこと。
それは「外反母趾の原因は?」ということ。
それがわからなければ、適切な対策を取ることはできないはずです。
現在明らかになっている原因から考えて、必須なのは歩き方の改善。
そしてこれこそが最も効果が大きく、かつ根治につながる改善法なのです。
しかし歩き方と言ってもさまざまなものがあり、逆効果になるものも多いのです。
私たちのお伝えしている歩き方は、理論的にも裏が取れているだけでなく、改善症例数も膨大なものがあります。
ぜひ取り組んでみてください。