よく耳にする外反母趾の治し方の1つに、テーピング治療があります。
外反母趾に悩んでいる方であれば、試してみたことのある方もおられるでしょう。
ここでは私が専門家の視点から、テーピング治療の意味や効果等をお伝えします。
外反母趾を治すのに、テーピングは効果があるのか?
もしすでにあなたが外反母趾の改善のために、テーピングを頑張ってこられたのであれば申し訳ないのですが、私はこれまでの専門家としての経験上、効果的ではなく必要ないと考えています。
効果的ではない2つの理由
その理由は以下の2つ。
① 外反母趾になってしまう原因と、テーピング治療の相性が悪いから。
② テーピングを使わなくても、外反母趾は十分治せるから。
これは他の外反母趾情報サイトや一般の常識に比べると、かなり思い切った意見に思われるかもしれません。
しかしこれは理論的な裏付けと、これまでの治療の実績に基づくものです。
まずは、なぜテーピングと外反母趾の発生原因との相性について、詳しくお伝えします。
どうやって外反母趾になってしまうのか
まず外反母趾の発生のメカニズムを、できるだけ簡単に説明してみます。
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形では土踏まずがあって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
これを専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まずが落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
外反母趾発生の仕組み
これを踏まえて、外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや、外反母趾発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
テーピング治療の問題点
そしてここで話はテーピング治療に戻ります。
テーピングは緩み切ってしまった外反母趾の足を、「しっかり足」に固定してしまおうという狙いでしょう。
しかしまず先ほどの話で言うと、「ぐらぐら足」に戻らないよう、固めてしまって良いのかと言うことです。
固定をしてしまっては、衝撃が直通
「ぐらぐら足」は悪者ではありません。ずっと「ぐらぐら足」なのがダメだっただけです。
むしろ衝撃吸収のためには、必ず必要な状態。
もし固めてしまい、「しっかり足オンリー」の状態で歩いてしまうと、歩くときの衝撃はすべて上に上がってきます。
なので膝や股関節、腰などはその分必ず早く悪くなっていきます。
テーピングをしていても、歩き方の癖はそのままで治っていない
しかしこの話をしても、中には「足の形を治すのが優先だから、膝や腰は仕方がないと」言う方もおられるかもしれません。
そんな方に考えていただきたいのは、「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖はそのままなのに、テーピングを外せる日はやってくるのか?と言うことです。
テーピングやギブスなどの固定は、そもそもずっと一生やり続けるものではありません。
一定期間の固定によりダメージを減らし、修復を待つのが本来。
あなたの外反母趾がもしテーピングのおかげで形が治ったとしても、「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖がそのままであれば、またすぐに元に戻るのは明らかです。
ではなぜ、テーピング治療は広まっているのか
ではなぜテーピング治療というのは、こんなにも広まっているのでしょうか?
私が思うに、皆さん形を整えるとことに意識が行きすぎだから、なのではないかと思っています。
その形になった原因が突発的な事故等であれば、形を整えにかかる固定は有効でしょう。
事故などで骨折した場合等がそうです。
しかしもし、その形になった原因が突発的な事故等ではなく、毎日の生活の積み重ねの中にあったとしたらどうでしょう。
先程の骨折の例で言えば、日々骨折の原因を積み重ねているのであれば、それをどうにかしない限り、常にギブスは必要になってしまうのではないでしょうか。
テーピングを必要としない、外反母趾の治し方
ではテーピングを使わず、どうやれば外反母趾は治るのでしょうか?
それはその「ぐらぐら足オンリー」の歩き方を改善し、「しっかり足⇔ぐらぐら足」と言う人間の足の骨に沿った、本来の歩き方を取り戻すことです。
そうやって足にかかる無用な負担を減らすことができれば、外反母趾は自然と治っていくものです。
改善した実例(測定写真)
本当かな?と思われる方もおられるかと思い、いくつかの実例を挙げておきます。
これらは大学病院でも使用しているフットルックという、信頼性の高い計測器のデータです。
この方の場合は、左足は中程度後半だった外反母趾が、約4か月後には正常値一歩手前まで改善しています。足の横幅も、1センチ以上も小さくなっています。
この方は80歳を超える女性。時間はかかっていますが、それでもやはり中程度後半の外反母趾が、正常値手前まで改善しています。
これらの改善は、基本的に歩き方の改善でもたらされたもの。
足の指には一切触れてはおりません。
そしてこのような例は、公開許可をいただいているものだけで1000例以上もあり、私どもにとっては珍しくないのです。
外反母趾を改善する歩き方
具体的にはどんな歩き方をすれば良いのでしょうか?
まずはその場で行進をするように、足踏みをしてみてください。
そしてその動きのまま、ゆっくり前に出てみてください。
いつもよりももを持ち上げるような、この歩き方でOKです。
「本当にこれだけで?」
「一般的に良いと言われている歩き方と、全然違うけど?」
よく言われますが、大丈夫です(笑)
私は治療の現場でもこれで成果を出していますし、足の骨格の仕組みから見てもこれで正解です。
試してみていただければ、足指への負担が軽減していることが、すぐにわかるでしょう。
まとめ
テーピング治療は、一般的に広まっている外反母趾対策の一つ
しかし足は歩くときに変形を繰り返すことを必要としており、それができなくなったのが外反母趾の原因。
だとすれば固めてしまうテーピングは、効果的な対策とは言えないのです。
それよりも必要なのは、正しい足の使い方・歩き方を取り戻すこと。
動画で紹介した歩き方で、その「ぐらぐら足⇔しっかり足」の歩き方に完全に戻ったわけではありません。
しかしの歩き方で、その基礎までができていることになります。
やってみると痛みのある方であれば、まずそもそも痛みが軽減していることに気づくはずです。
ぜひ取り組んでみてください。