外反母趾は親指の症状のことですが、実は同じような症状が小指にもあります。
小指の場合は「内反小趾」と言いますが、気づかない内になってしまっている方は、意外にたくさんおられます。
このページではそんな内反小趾についての見分け方や原因、その改善法についてお伝えします。
内反小趾とは(基準と症状)
内反小趾とは、簡単に言うなら「小指側の外反母趾」。
同じように小指の付け根が外に広がった結果、小指の先が内を向いてきます。
小指のことを「小趾」と言い、小指から向かって体の中心の方を「内」とするので、「内反小趾」と呼ぶ訳です。
内反小趾かどうかの基準も基本的には、外反母趾と同じように「角度」で診断されます。
しかし基準となる数字は微妙に違ってきます。
外反母趾と同じように小指側を測り、以下の様な基準で判断します。
●0~9度→正常
●10度~19度→軽度
●20度~29度→中程度
●30度~→重度
ちなみに冒頭の写真で小指側18度なので、中程度手前の内反小趾になっています。
痛みは無い場合もありますが、外反母趾と同じように小指の付け根が痛くなることもあります。
悪化した場合には小指の付け根の外側から出血し、痛みで靴に足を入れることができず、サンダルしか履くことができない状態にまでなります。
私の治療院にも、実際そのような患者さんがチラホラお見えになります。
内反小趾の原因
内反小趾と外反母趾は、関連した兄妹のような病気。
実際にどちらも併発している患者さんの方が多いくらいです。
実は内反小趾と外反母趾は、発生の成り立ちや原因はほとんど共通であり、最後のわずかな違いでどちらになるか(もしくはどちらもになるか)が変わってくるもの。
治すためにはまず、その発生の仕組みを知ることが必要なので、そこからお伝えします。
「しっかり足」と「ぐらぐら足」
実は人間の足は歩いている時に、ずっと同じ形をしている訳ではありません。
大きく分けると、2つの形を行ったり来たりしながら歩いているのです。
一つ目の形は、皆さんがよくご存知の状態。
この形では土踏まず(アーチ)があって、足の骨と骨の間が密に締まった状態。
この状態を専門的には回外(スピネーション)というのですが、ここでは簡単に「しっかり足」と呼ぶことにします。
そしてもう一つは土踏まず(アーチ)が低く落ちて、足の骨と骨が緩んでぐらぐらになった状態。
こちらも正式には回内(プロネーション)というのですが、ここでは「ぐらぐら足」と呼ぶことにします。
体を支えるためには「しっかり足」が適しています。
しかし歩くときは「しっかり足」のままでは、その衝撃が直通で膝や股関節に行き、痛んでしまいます。
なので着地の瞬間にその衝撃を吸収するため、、足はあなたが考えなくても自然に「ぐらぐら足」の形に移行しているのです。
そして着地が終わった瞬間からすぐに「しっかり足」に戻る。
実はこれを繰り返して歩いているのです。
内反小趾発生の仕組み
これを踏まえて、内反小趾や外反母趾はなぜ発生するか。
本来「しっかり足⇔ぐらぐら足」を交互に繰り返しながら歩いていたものが、様々な原因で「ぐらぐら足オンリー」で歩く癖になってしまっている方がおられるのです。
「ぐらぐら足」は衝撃吸収用の緩んだ状態なので、それを常時使っていると足に負担が大きく、足は横に伸びていってしまいます。
これが内反小趾・外反母趾の発生原因で、専門的には過剰回内(オーバープロネーション)といいます。
この過剰回内という足が緩んで横に広がった状態を基本として、親指付け根付近で過剰に蹴るような歩き方で外反母趾、小指付け根付近だと内反小趾、両方だと両方ということになるのです。
この「しっかり足⇔ぐらぐら足」の仕組みや発生のメカニズムは、別に私が見つけ出した特別な説ではありません。
アメリカなどの足の医療の発達した国では、実はごくごく当たり前の話。
実は足病医学の基礎中の基礎なのです。
内反小趾の治療法
いかがでしょうか?
内反小趾にしても外反母趾にしても、結局はあなたの良くない足の使い方・歩き方が原因だということ。
ということは基本的には、その改善のためには当然「歩き方を正す」ということになるはずです。
間違ってもやってはいけないのは、足の指を強引に広げて真っ直ぐにしようとすること。
いわゆる「矯正」というやつですね。
気持ちはわかりますが、それは原因を無視した、形だけを整える強引なやり方。
足の横幅は広がって緩んだまま、むしろさらに広がってしまう可能性が高く、余計に悪化します。
内反小趾治療に最適な「歩き方」
まずはその場で行進をするように、足踏みをしてみてください。
そしてその動きのまま、ゆっくり前に出てみてください。
いつもよりももを持ち上げるような、この歩き方でOKです。
「本当にこれだけで?」「一般的に良いと言われている歩き方と、全然違うけど?」
よく言われますが、大丈夫です(笑)
私は治療の現場でもこれで成果を出していますし、足の骨格の仕組みから見てもこれで正解です。
この歩き方は足指よりも、かかとをメインにして歩く仕組み。
内反小趾の方には、これが大きなポイントになります。
「足指を使わないから内反小趾になっている」と思っておられる方も多いようですが、そうではありません。
体を横から見ればすぐにわかりますが、体の真下はかかと。
なので歩くときにもかかとを中心に歩くのが、骨格の構造上も自然で負担がないのです。
かかとをしっかり使って歩ければ、内反小趾でも外反母趾でもが、どちらであっても「足の前側」へのダメージは、大きく減ることになるのです。
内反小趾サポーター
内反小趾でお困りの方の、すぐにでも改善したい問題点は「痛み」のはず。
酷い場合は靴との摩擦で、出血するところまで行くこともあります。
その摩擦する患部を保護しようと、サポーターを利用する方がおられます。
これは、条件付きでOKです。
条件とは「足の小指と薬指を離そうとする構造のサポーターは避ける」ということ。
内反小趾は小指が内を向いたのではなく、小指の付け根が外に広がった病気。
基本的に理由無視の強引な矯正は良くありませんが、もし矯正するとしても小指を広げるのではなく、小指の付け根を締めなくては元には戻らないはずです。
小指を広げても足の横幅自体は変わらないので、靴に当たる状況は変わらないか、広げた分むしろさらに当たることに。
なのでサポーターというよりも、クッションの多めに入った絆創膏を貼っておくぐらいの方が、ちょうど良いでしょう。
内反小趾にオススメのインソール
私が外反母趾改善の専門家としてお勧めしているのは、インパクトトレーディング社の取り扱う、「スーパーフィート」というインソールです。
このインソールはアメリカの足病医学の理論をもとに作られた、医療用インソールの一般用。
しっかりと内反小趾の原因である、過剰回内対策を施しています。
いくつかの種類がありますが、スーパーフィートであればどの商品も、過剰回内対策という基本コンセプトは同じです。
足の状態が良くない方からアスリート向けまで様々なグレードがあり、それが色で分かれています。上位モデルとしてオーダーメイドもあります。
足の状態に合わせて選ぶことが重要で、本来研修を積んだスタッフに選んでもらうのがベストです(販売店は基本的に必ずその研修を受けています)。
しかしもし近くに取扱店が無く通販で買う場合、外反母趾の方は基本的に「トリムブラック」という商品を選ぶようにすると、間違いはありません。
内反小趾予防に最適の靴
内反小趾予防に最適の靴は?と訊かれたら、私が足の専門家としてお勧めしているのは、ニューバランス。
ニューバランスは元々、外反母趾や偏平足などの足の症状で悩む方のための矯正靴メーカーとして、100年以上前にスタートしました。
なので、蓄積した情報量が違います。
そして実際に専門家の私が履き比べてみても、歩きやすさが全然違う。
それは正しく歩こうとすればするほど、作り手の意図を感じます。
最近はニューバランスも、ファッション重視のアイテムも増えています。
とは言っても依然、他メーカーに比べると足の健康のことを考慮した、機能重視のデザインが多いです。
なので逆に言えば、デザインにそれほど代わり映えがしない感じもしてしまいますね。
しかしそれがある意味、足にとっての一つの答え、と言えるのです。
オーソドックスなデザインのものがベターですが、私のおすすめは880というシリーズ。
ニューバランスの靴の横幅は、B<D<Eの順で大きくなるのですが、このモデルはEで外反母趾の方も安心の横幅です。
歩きやすい工夫がされているウォーキング特化モデルで、しかも値段もお手頃なのがうれしいですね。
MW880がメンズ、WW880はレディースなので、選ぶときは注意してください。
内反小趾で手術が必要なケース
ごくごく稀に、出っ張った部分を切除する手術を受ける方もおられますが、基本的に手術は必要ありません。
歩き方を正すことで、痛みはほぼ全員の方が無くなり、横幅が小さくなっていくので靴にも当たらなくなります。
では本当に、歩き方を正したぐらいで、内反小趾は改善するのでしょうか?
いくつかの例を挙げてみます。
この方の外反母趾は大きく改善していますが、右足の内反小趾の角度も改善しています。
そして左足は角度的には改善していないですが、横幅は大幅に小さくなっています。
むしろこの横幅が重要で、小さくなれば足は締まって安定し、靴にも当たらなくなります。
この方も外反母趾は重度を大きく超える重傷者でしたが、どちらの足も中程度にまで改善しています。
そして内反小趾も角度的にも少し改善していますが、それよりも横幅の締まりが大きく影響し、小指側も痛かったのが改善したそうです。
まとめ
小指側にも外反母趾の様な症状は発生します。
それを「内反小趾」と呼びます。
発生の原因は、外反母趾と同じ「良くない歩き方」
なので歩き方を正すことで外反母趾同様、内反小趾も改善させることはできるのです。