外反母趾は、決して靴のせいだけで発生するわけではありません。
しかしもちろん靴の影響は大きいので、選び方はとても重要です。
例えば「痛みは出なくなるが、症状はどんどん悪化する靴」などもあり、注意が必要。
ここでは外反母趾の方のための靴の選び方、専門家おすすめの靴についてお伝えします。
外反母趾の方に最適なシューズブランド
外反母趾の方に「お勧めのシューズブランドはどれですか?」と訊かれたら、私が足の専門家としてお勧めしているのは、ニューバランス。
ニューバランスは元々、外反母趾や偏平足などの足の症状で悩む方のための矯正靴メーカーとして、100年以上前にスタートしました。
なので、蓄積した情報量が違います。
そして実際に専門家の私が履き比べてみても、歩きやすさが全然違う。
それは正しく歩こうとすればするほど感じます。
最近はニューバランスも、ファッション重視のアイテムも増えています。
とは言っても依然、他メーカーに比べると足の健康のことを考慮した、機能重視のデザインが多いです。
なので逆に言えば、デザインにそれほど代わり映えがしない感じもしてしまいますね。
しかしそれがある意味、足にとっての一つの答え、と言えるのです。
外反母趾の方にオススメのモデル
オーソドックスなデザインのものがベターですが、私のおすすめは880というシリーズ。
ニューバランスの靴の横幅は、B<D<Eの順で大きくなるのですが、このモデルはEで外反母趾の方も安心の横幅です。
歩きやすい工夫がされているウォーキング特化モデルで、しかも値段もお手頃なのがうれしいですね。
MW880がメンズ、WW880はレディースなので、選ぶときは注意してください。
外反母趾の方が選ぶべき靴
では次にもう少し範囲を広げ、どんな靴を選ぶべきかに話を移します。
まず、仕事上などでの制限が無ければ、ごく一般的な「スニーカー」を選ぶと言うのは、間違いのない賢明な選択です。
スニーカーは、実はすごい
ちゃんとしたスニーカーは、実は機能としてかなりスゴいです。
小中高と野球しかやってこなかった私には、思いもよらなかったことですが、靴は機能のことはあまり考えず、ほぼファッション性のみで選んでいる方もおられるようです。
そんな方にとってはスニーカーと言うものが、どれだけ歩きやすく設計されているかということを、あまりご存じないようです。
外反母趾専用靴等を探すより、ずっと安定した間違いない選択です。
スニーカーって、どれのこと?
しかしそもそもどんな靴をスニーカーというのか、はっきりとはわかっていないという方も、意外に多くおられるようです。
なのでここで詳しく説明しておきます。
スニーカーと言うのは語源は「スニーク(忍び寄る)」と言う意味。
靴の外底(アウトソール)がしなやかになっていることで、とても歩きやすい設計。
しかし間違えやすいのは、例えば上の写真のような靴はスニーカーではありません。
あのような靴は「デッキシューズ」といいます。
デッキシューズは船のデッキ(甲板)の上で履くことを想定された、滑りにくい靴。
なので歩きやすい設計という訳ではないのです。
ちなみに一般的なコンバースの靴は、このデッキシューズに近いアウトソール。
根強い人気のスタンスミスなども、どちらかと言うとこれに近いです。
なので外反母趾の方には、これらはあまりおすすめはしていません。
ここで挙げている一般的なスニーカーと言うのは、例えばこんな感じの靴。
外反母趾の方のスニーカー選びのポイント
スニーカーを選ぶとしても、やはり良し悪しはあります。
しかしそれを見分けるポイントがどこかわかっていなければ、判断のしようがありません。
なのでここではスニーカー選び方のポイントを、3点ほどお伝えしておきます
スニーカーは踵が命
まず足はかかと中心で歩くのが基本となるため、靴もかかとが命。
写真のヒールカウンターと言う部分が硬く、かかとをしっかりホールドする設計が重要。
ここが柔らかいものは良くありません。
なので靴のかかとを踏んで歩くのは、外反母趾の方は特に厳禁です。
ねじれに強い
次に、適度にねじれに強い設計であること。
歩くときに足はねじれることになるのですが、柔らかすぎると支えにならずねじれが大きくなってしまうのです。
スニーカーであればこれが固すぎる、ということあまりないので、柔らかすぎに注意。
上の写真以上、ねじれる様ではよくありません。
曲がっていいのは一か所だけ
最後に、靴が曲がって良いポイントは一か所だけ。
上の写真の黄色シールのポイント(フレックスポイント)だけで曲がること。
ここ以外でも曲がるようでは、歩き方は安定しないのです。
逆にここが曲がらないものは、とても歩きにくくなります。
外反母趾の方がスニーカーを選ぶときには、特にこの3つをチェックすることが重要です。
外反母趾の方が選んではいけない靴
逆にどんな靴が外反母趾の方にとって負担が増すのかも知っておくと、靴選びはさらにしやすく確かなものになります。
なのでここでは、外反母趾の人が「選んではいけない靴」についてお話しします。
絶対ダメなポイントは3点。
かかとが高い靴
かかとが高い靴と言われてすぐに思い浮かぶのが、ハイヒール。
そもそもハイヒールがなぜ外反母趾に良くないのか。
それは先の尖った形状ではなく、かかとに高さがあることで重心が前に移り、足の前の方で歩くことになってしまうから。
体を横から見ればすぐにわかりますが、体の真下はかかと。
なので歩くときはかかとがメインになるのがの基本。
これは骨格上、ごく当たり前のことです。
それがやりにくい靴は、外反母趾にも体にも負担大。
そしてそれは、たった数センチ踵が高いだけでも、です。
ましてや外反母趾の方は足指~付け根辺りが弱った状態。絶対に避けるべきです。
ちなみにハイヒールではなくても、かかとが高い靴と言うのは、実はかなり多いもの。
そしてそれら全て同様に、外反母趾には良くありません。
あなたがもし「かかとが少し上がっている位の方が歩きやすい」と感じているなら、それはすでにかなり問題。
体の軸は前傾し、重心がずれてしまっているはずです。
そのまま行けば前傾が酷くなり、そのうち杖が必要、なんて所まで行ってしまうのです。
ハイヒールを履かなくてはいけない、という場合を除いて、外反母趾の方は絶対にフラットなソールの靴を選ぶべきです。
靴の中敷き(インソール)が柔らかい靴
外反母趾の方は、靴の中敷きが柔らかいものは、避けるべきです。
極端な例を出すと、靴の中がムートン状になっているやつ。
女性が冬場なんかに良く履いてしまうやつですね。
なぜダメかというと、柔らかいせいで靴の中で足が安定しないから。
靴の中で滑らないように指を踏みしめる等の、無駄な力を使ってしまいます。
ムートンほどでなくても、柔らかいだけでも同様です。
それは丁度、砂浜を裸足で歩くのと同じこと。
感触は気持ちがいいけど、安定しないので無駄に力を使い、歩くのが疲れますよね。
あれと原理的には同じ。
外反母趾は、指を使わない退化で起こるのではなく、指に負荷をかけすぎて起こる病気。
それはアメリカなどの足の医療の先進国ではすでに常識。
なので靴の中敷きは柔らかいものを避け、踏ん張る必要の無いものを選びましょう。
調節できない靴
靴ひもでもマジックテープでも何でもいいので、横幅が調節できるものを選ぶのが重要。
なぜなら良くも悪くも、足の横幅はどんどん変わるから。
足の横幅は時間帯や疲れ具合など、様々な条件で変わります。
そして横幅はきついと擦れてて痛いし、ゆるすぎると靴の中で足が安定せず、その結果歩き方が悪くなってしまうのです。
冒頭でお伝えした「痛みはましになるけど、症状が悪化する靴」というのは、これのこと。
なので外反母趾の方が痛みのことだけを気にして、靴の前方部分がゆる過ぎる靴を履くのはお勧めしません。
この3つが外反母趾の方にとって、選んではダメな靴の基本です。
外反母趾専用靴・外反母趾の方にお勧めと言われる靴は?
残念ながら、外反母趾の方にお勧めの靴とか、外反母趾専用の靴として売り出しているものでも、これら3つの特徴を持つ靴があるのです。
これは日本の足の医療や情報が、遅れていることに原因があります。
または、外反母趾の見た目や症状に対してだけ対応した靴、を作ってしまうので、そういうことになったりするようです。
今、楽にはける靴が、外反母趾の方に良い靴だという訳ではありません。
今、楽だということは、それを助長する靴である場合もある、ということです。
なので名前だけに囚われず、お伝えしたような選び方を参考・応用しチェックしましょう。
まとめ
靴の選び方は、外反母趾に大きく影響します。
選び方に注意して、できればスニーカーをメインで履きましょう。
ブランドに迷ったならばニューバランス。
これで靴選びは、間違いが少なくなるでしょう。
基本はスニーカーであるべきですが、外反母趾でもパンプスやサンダルなどを履きたいという方は、以下の記事を参考にしてください。